技術的に重要な業績

スラグ同調回路の設計開発

スラグ同調回路は、大電力またはハイチャンネル用TV放送機の高周波出力回路に使用すると便利な回路である。これは残留側波帯特性を得るための一種の2重同調回路である。出力同軸回路が同調回路の一部になっているので、小型で安定、慣れると調整が容易な回路である。論1)のFig.6のC8に見ることができる。

放送衛星の国産化

東芝は郵政省から実験用中型放送衛星の概念設計、予備設計、および基本設計を受注し、倉石は技術陣を陣頭指揮し、それらの完成に注力する中でプロトタイプ衛星の設計製造まで技術の修得に貢献した。東芝は米国のGE社を第一副契約者に選び、設計製造の大部分をGE社の支援のもとに実施した。従って倉石の部下の技術者は長い者では3年間もGE社のSpace Centerに出張し、GE社の技術者と机を並べて仕事をした。スペースチャンバーでのサブシステムの試験等はGE社の設備を使用した。かくして衛星のプロトタイプの完成と技術の習得に成功した。なお衛星のSバンドアンテナは、東芝総合研究所の設計であり、Kバンドのアンテナは東芝小向工場が製作した。この衛星は1978年4月にケープケネディより打上げられ、「ゆり」と命名され、三年の寿命を全うした。

VHF帯高能率電力増幅器

倉石は接合型トランジスタを用いたVHF帯CW電力増幅器の電力効率向上を図るため、高能率増幅器の動作解析を行い、新しい回路設計法を提案した。接合型トランジスタを用いたVHF帯CW電力増幅器では、拡散容量の影響でコレクタ電流の流通角を狭めてコレクタ能率を上げることは困難であり、むしろE級増幅器に近い半スイッチモードの増幅を行うことにより、高能率が得られると考えた。この様な高能率増幅器の動作機構と回路設計法を明らかにするために、トランジスタをモデル化し、コンピュータシミュレーションにより、観察不可能な接合容量を流れる電流や、リードインダクタンスによって生じる電圧の分離ができ、スイッチ動作を明確に捕らえることができた。
 以上の手法で製作した東芝製トランジスタ2SC2182を用いた出力30MHz、14.8Wの増幅器のDC-RF変換効率は、79.1%の高成績を示した。

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